【対談】仮想通貨業界最前線の3人に聞いた「業界の現状と理想」

今回は、(写真左から)techtec CEO田上智裕氏,Aerial Partners CEO沼澤健人氏,元税務大学校教育官 安河内誠氏,のお三方をお招きし、仮想通貨に関する投資や税金、規制と業界発展などをテーマにお話を伺いました。

写真撮影:藤原慶

インタビュイー紹介

沼澤健人氏(写真中央)

株式会社Aerial Partners代表取締役。仮想通貨取引計算サポートと税理士紹介を行う『Guardian』、仮想通貨取引計算ツールである『G-tax』を提供している。会計コンサルティングファームであるAtlas Accounting代表として、仮想通貨交換業者の申請サポート・顧問サービスを提供。複数のICOプロジェクトの顧問を務めており、一般社団法人日本仮想通貨税務協会(JCTA)理事も兼任。

安河内誠氏(写真右)

2015年から2017年まで国税庁税務大学校で研究活動し、「仮想通貨の税務上の取扱い」を研究して論文を公表。現在は「仮想通貨と国際課税の研究家」として活動中。

田上智裕氏(写真左)

学生時代にチームラボでアプリ開発を経験後、リクルートホールディングスでブロックチェーンのR&Dを担当。2018年に独立しtechtec,Inc.を創業。ライターとメディアのマッチングプラットフォーム「techtec」を運営している。

仮想通貨の価格はどのように形成されているか

ーーまずは、個人投資家の方々にも馴染み深い投資の観点からお話を伺えればと思います。「投機的」との声も多い仮想通貨市場ですが、個人投資家からするとそもそも仮想通貨の価格はどのように形成され、推移しているか疑問があると思います。

沼澤:価格の話は投資家の方にとっては最大の関心事ですよね。取引所が市場を整備している以上、金をはじめとする他の投資商品と仮想通貨の価格形成のアルゴリズムは一致していると考えられます。

つまり、他の投資と同様に投資家からの期待によって市場価格が形成されているということです。

例えば先日の仮想通貨の価格の暴落では、「納税用の資金が市場から抜かれているんじゃないか」という憶測がありました。実際にはそう思った人が納税資金以上に資金を抜いたことで、価格が下落したといった側面も一因となっていると理解しています。

安河内:去年の暴騰や今年の暴落の原因に関しては、いろんな説が存在します。しかし、どちらも買いが買いを、売りが売りを呼ぶ状態であり、確たる裏付けがあった値動きではなかったのではないかと思います。

特にビットコインはアプリケーションやサービスなどのプロジェクトという訳ではないので、投機的な動きだったと言えますよね。

田上:新しい市場ができるときは、一定投機の要素はあると思います。

ビットコインは誕生から9年目になって、ファンダメンタルというか、価値の裏付けが以前よりは出来てきたかと思います。最近は、それを口火に投機以外の「実需」の部分が出来てきたかなと思っています。

沼澤:裏付けというワードがありましたが、本質的・根源的な価値の裏付けとしてビットコインの価値の裏付けをマイニングによって消費された電力とする考え方があります。

イーサリアムなどでいえば、イーサリアムの規格を使ったICOでのファンディング金額等、プロトコルの流動性・規模を価値の裏付けと考える人もいますよね。

これらの考え方が正しいかどうかはさておき、そういった仮説に基づいて思考してみるのは悪くないと思います。

仮想通貨市場との向き合い方

ーー仮想通貨の市場と向き合う上で、個人投資家はどんなことを意識すべきでしょう。

沼澤:仮想通貨市場に入ってきている金額は他の投資商品と比較するとまだ規模が小さい、つまり流動性が低い状態であるということは認識しておく必要があります。

流動性が十分でない仮想通貨市場においては、大口投資家の動向で簡単に市場価格が左右されてしまうリスクがあります。個人投資家の方が投資している通貨に関して正しい分析をしていても、予期せぬ大きな値動きをする可能性があるということです。

もう1つ意識することとしては、ビットコインとアルトコインのレートを区別することです。

基軸ではない通貨に関しては日本円とのレートの内訳を考える必要があります。アルトコインのレートは、ビットコインとアルトコイン,ビットコインと日本円の2つのレートを掛け合わせて日本円での価格が決定されているわけです。

ある通貨の価値がビットコイン建てで増えていても、もしビットコインが円建てで下がっていると、対日本円で見た際にはその通貨の価値は下がっているように見えますよね。

なので、アルトコインに投資する場合は基軸となる通貨の影響を強く受けることを認識して投資を行う必要がありますね。

安河内:最近では、仮想通貨はそれなりに投資対象の一部として地位を得てきました。実際に、ポートフォリオの1つとして組み込むのはアリだと思います。

しかし、株式などの他の投資対象に投資せず仮想通貨だけに投資をするのはあまり良いこととは言えないかもしれません。仮想通貨の市場は非常にボラティリティが高いですし、複数の通貨に投資していても、沼澤さんのお話にあったように基軸通貨の影響を強く受けるためあまりリスクの分散にはなりません。

あとは、誰かが価格が上がるといったから買う、というのはやらない方が賢明でしょう。現在は仮想通貨と一口に言っても様々な選択肢がありますが、しっかり仕組みを知った上で何に投資をするかを決めるというのが大事だと思います。

投資以外の視点からみる仮想通貨

ーーここまでは価格や投資というテーマを中心にお話を伺いましたが、値動き以外にはどういった視点で仮想通貨に注目していくと面白いでしょうか。

田上:ブロックチェーンプロジェクトの中身を見て欲しいと思っています。プロジェクトが注目される時は何かしらのバックグラウンドがあって注目されることが多いです。

コインチェック事件を発端にDEX(分散型取引所)が注目されましたし、Facebookのプライバシー問題をきっかけに匿名通貨やシークレットコントラクトが注目されました。

色々なプロジェクトの中身を知るにあたって、基本となるビットコインやイーサリアムに関する知識は身につけておきたいところです。

安河内:日本円の価格で上がったか下がったか、というところ以外にももっと注目して欲しいですね。ビットコインは世間にいろんなクエスチョンを投げかけるキッカケになりました。代表的な例としては、非中央集権の思想は是か非か、という話がありますよね。

そういった思想のところも見ながら、仮想通貨について知っていくと面白いかもしれません。

田上:まだ読んでいない人は、ビットコイン論文を読むことをオススメします。ビットコイン論文を知っているかどうかで、仮想通貨に関する諸々の要素への理解度はかなり違ってくると思います。

英語で書いてあるので、英語で読める人はいいんですが、読めないという方はこの前記事を書いたので、こちらの記事を読んでいただければと思います。

仮想通貨の税制について

ーー仮想通貨に関する情報の中で、個人投資家の方々から難しいという声をよく聞くのが税金についてです。現状の税制や納税の実態についてはどうお考えでしょうか。

安河内:17年末に仮想通貨の価格が全体的に大きく値上がりしたので、そこで仮想通貨を売った人は、大きな利益を得たと思います。

そういった人たちは、税務処理をどうしようとなったわけで、そんな中で沼澤さんが代表を務めるAerial Partnersさんのように、確定申告をサポートするサービスを提供してくれたことは、投資家の方々にとっては非常に助かったと思いますし、税務当局にとってもよかったと思います。

仮想通貨に係る税金については、昨年の12月に「仮想通貨に関する所得の計算方法について」というQ&Aを国税庁が公表しました。税務当局の動きとしてはかなり早かったと思いますし、いまの税制での取扱いがはっきりしたことで、今後はどういう税制が望ましいのかという議論にもつながると思いました。

沼澤:Q&Aが出るまでは、専門家が税法の趣旨に即したアドバイスをしても確固とした指針が国から出ているわけではないので足並みが揃わない状況でした。その中で、当局からQ&Aが出たことは非常に助けになりました。

しかし、実際に弊社が確定申告をサポートさせていただいた数や、先日当局が発表した確定申告のデータから算出した「億り人」の数を見ているとやはり実態よりも少ない印象があります。

Aerial Partners社は仮想通貨税務に関するサービスを展開している

これはおそらく実際に儲かっているが申告を行なっていない方がいるということです。ただ、ちゃんと申告をできていない人=悪い人というわけではないと思います。

申告の難易度がとても高いために、諦めてしまっている人が相当数いると思います。彼らが故意に所得を隠しているわけではないと仮定して、より申告しやすい制度になるよう検討をして欲しいです。

今年の仮想通貨税務に関しては、私共がおそらく日本で一番実務の経験は積んでいるはずです。是非、その経験を当局側にシェアできる場を作りたいと考えています。

田上:私も実際に申告をする側の立場だったのですが、確かにかなり難しく感じました。

沼澤:例えば、月のお給料から源泉徴収でいくら取られたかってそこまで意識することはないですよね。それと同じで、仮想通貨に係る税に関しても納めていることを意識しないで済むくらいスムーズなものにするのが弊社の事業のミッションだと考えています。

ーー日本は仮想通貨・ブロックチェーンに関して法整備が世界でもっとも進んでいると言われる一方で、技術面では遅れをとっているという声も増えました。適切な規制とブロックチェーン技術における国際競争力強化の両立にはどんな取り組みが必要でしょうか。

沼澤:イノベーターは実務の現場にいます。実際に起業家たちがイノベーションを起こしている現場を見ていただいて、それを後押しできるような規制環境となるよう積極的な働きかけをしたいと考えています。

現状は交換業者の団体に自主規制を任せていますが、取引所以外の実務側の要望も当局側に伝えていきたいです。

実際に、ブロックチェーン業界においては海外で既に日本の存在感が薄れ始めています。イベントなどでアジア人にお声がけすると、大抵中国か韓国の方です。

中国や韓国は、国内にプロトコルレイヤーのメジャープレーヤーがいます。日本でも、国内発のプロトコルやオリジナルのチェーンを作る技術者が出てくる環境になると、それを起点にイノベーションが加速すると考えています。

安河内:国が営利を追うという意味ではないのですが、他の国と競争せざるを得ない中では国自体が企業的になってきている側面があり、逆に企業も国家の機能の一部を果たしている側面があるように思います。

そのような状態がより進行していく中で、国が競争力を高める上でも企業がより市場で躍進する上でも、実務側の意見もしっかり吸い上げつつ双方にとって良い着地点を見つけていければ良いのかなと思います。

田上:スタートアップとしてビジネスを作る身からすると、自分が作っているサービスにトークンを埋め込むことは規制の対象になるので大変難しいのが現状です。

スタートアップ界隈でブロックチェーンをやってみたいという相談を受けますが、日本ではトークンを扱う時点で仮想通貨交換業への登録が必要になる可能性があるのでなかなか難しいという話になります。

techtec社は海外のブロックチェーンプロジェクト「Primas」と提携

実際にそのレギュレーションの影響で優秀な若手ITスタートアップがブロックチェーンから離れていっていますし、ブロックチェーンをやる場合にはタイやシンガポールに行ってしまう場合が多いです。

こういった現状は国としても望ましくはないと思うので、是非現場の声を伝える機会があれば嬉しいです。

まとめ

今回の対談では、仮想通貨業界の最前線でそれぞれ違う関わり方をされているお三方に幅広いテーマでお話いただきました。

投機として興味を持った多くの方にも、より違う観点からの興味を持っていただければ幸いです。また、仮想通貨やブロックチェーンに対してネガティブな印象を抱いている方にも、どうか興味を持っていただければと思います

おまけ

とてもシリアスな話題が展開された今回の対談ですが、当メディアcoingeのアドバイザーでもある田上氏は何やら気になるものを持参していました。

2リットルのミルクティー(タピオカ入り)が机上に。

ーータピオカお好きなんですか…?

田上:大好きです。自宅で茹でて毎日持参しています。

ストローは使わず、全力で傾けて飲むという

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