暗号通貨の匿名性を徹底解説。プライバシーを担保するメカニズムとは

皆さんの中で、“匿名通貨”という言葉を聞いたことのある人は少なくないのではないでしょうか。 先日マネックスグループによって買収されたCoincheck社の運営する取引所コインチェック上でも、MoneroやDASH、Zcashなどの匿名通貨と呼ばれる暗号通貨が取引されていました。

Coincheckが交換業登録を認められないのは匿名通貨を取り扱っているため、などと噂されていますが、では匿名通貨とは一体なんなのでしょうか。どのような仕組みになっていて、何が問題なのでしょうか。

また、それら匿名通貨に限らず全ての暗号通貨の今後を考察する上で、匿名性というテーマは避けて通れないため、今回は暗号通貨の匿名性について触れていきたいと思います。

暗号通貨の匿名性|注目される理由も解説

インターネットにおけるプライバシー

暗号通貨の匿名性に触れる前に、そもそもなぜ匿名性が注目を集めているのかを説明しておきます。

匿名性の話は、インターネットにおけるプライバシーの問題と同時に語られることが多くなっています。 最近はフリーミアム型の(無料で使える)インターネットサービスが当たり前となっていますが、皆さんはそういったフリーミアム型のサービスを使用する際の”代償”について何か考えたことはあるでしょうか?

フリーミアム型とは

基本サービスは無料で提供するサービスモデル。収益は広告などで得るケースが多い。例としてはSNSなどが代表的。

GoogleやFacebookなどのフリーミアム型のサービスを利用する際、我々は多くの個人情報を運営者に提供しています。 ここでいう個人情報とは、名前や年齢などのデモグラ情報に限りません。 例えば、サービスを利用している時間帯や位置情報、起動時間による行動パターン、Webサイトの閲覧データによる趣味嗜好... 運営者はこれらの情報を大量に取得し、より高いターゲティング広告を配信するなどしてビジネスを行なっています。

WARC(世界無線通信主管庁会議)の調査によると、2017年の世界のインターネット広告における約25%を、GoogleとFacebookが占めているとのことです。 これは彼らが非常に精度の高い広告を配信できるということであり、それだけ大量のユーザー情報を収集しているということの表れだといえます。

大量の個人情報を取得しているということは、情報漏洩の危険性が隣り合わせになっているということです。 実際2018年3月末に、Facebookのユーザー約5000万人分の個人情報が不正に利用されるという事件が発生してしまい、CEOが謝罪するという規模にまで波及しました。

仮に、漏洩した個人情報が何かの悪事に利用されてしまった場合、我々の生活を脅かしかねないという事態にも発展しうるのです。このようなことが実際に起きているため、暗号通貨の匿名性を応用することでプライバシー保護に役立てないかという議論がなされています。

暗号通貨の匿名性とは

前提として、暗号通貨の匿名性とは、上記のような問題を完全に解決するための方法ではないことにご留意ください。 インターネットを利用したサービスである以上、良くも悪くも完全なプライバシー保護は現時点では不可能です。 暗号通貨の匿名性とは、「誰がどのぐらいの暗号通貨を保有しているかわからないようにする」という意味で使われることが多くなっています。

ウォレットアドレスと現実世界の本人は結びつかない

暗号通貨で取引するために、皆さんは自身でウォレットを管理している(と信じたい)かと思います。 現状、暗号通貨のウォレットを利用する際には本人確認は不要となっています。

そのため、例えばとあるウォレットで10BTCを管理していることがわかったとしても、そのウォレットが誰のものであるかがわからないため、実際誰がその10BTCを保有しているかはわからないのです。

何をもって匿名とするか

一方で、この状態を果たして匿名といえるのか、という捉え方もできます。 実際、特定のウォレットで管理している暗号通貨は全てブロックチェーンに記録されているため、そのウォレットでどのぐらい暗号通貨を管理しているのかは誰もが知ることができます。

そのため、例えばAliceがBobにウォレットのアドレスを直接教えた場合、BobはAliceから教えられたウォレットアドレスをブロックチェーンで特定し、過去にどれだけ取引したかを知ることができてしまいます。

特定の状況下では個人と結びつくことも

わかりやすい例として、ビットコインのブロックチェーンに記録されている最初の取引の中身を見ると、以下のウォレットアドレス宛に50BTCが送られていることがわかります。

最初のビットコイン取引に使われたアドレス
1A1zP1eP5QGefi2DMPTfTL5SLmv7DivfNa

上記のウォレットアドレスの取引情報
取引情報は、ブロックチェーンを遡ることで全て閲覧することができます。

最初のビットコイン取引の情報
2009年1月3日18時15分に50BTCを受け取っていることがわかります。

ビットコインの最初の取引となると、おそらく発明者のサトシ・ナカモトが管理しているウォレットによるものであることが推測できます。 このように、特定の状況下においては、誰がどのぐらい暗号通貨を保有しているのかを知ることができてしまうのです。これではとても匿名とはいえないでしょう。

何をもって匿名性というか、この議論は今後も続いていくことが予想されます。

暗号通貨の匿名性に関する動き

匿名性と一口に言ってもその仕組みは多岐に渡るため、いくつか事例を紹介していきます。

匿名性を追求した暗号通貨たち

まずは実際に匿名性を実現している暗号通貨、DASH・Monero・Zcashを紹介していきます。

DASH

DASHは元々Darkcoinという何とも如何わしい名称の暗号通貨でした。

DASHの匿名性は、Coinjoinという仕組みを元にして開発されたDarksendと呼ばれる取引手法を用いることで実現しています。

Coinjoinとは、元々ビットコインの匿名性を高めるために開発された仕組みで、同じタイミングで送金される取引を一箇所に集めてしまい、そこでごちゃ混ぜにした後で送金していくという流れとなっています。

Coinjoinのイメージ
上記のような取引を多数集めることで、Daveが受け取った3DASHがAliceからなのかBobからなのかわからなくしている

DarksendはこのCoinjoinをカスタマイズしたDASH独自の仕組みです。

Darksendには、

  • 送金者が合計3人以上
  • 送金の合計は1000DASHまで

といった規約が組み込まれています。

モネロ(Monero/XMR)

Moneroの匿名性は、リング署名という仕組みを応用したCryptoNightと呼ばれるMonero独自のアルゴリズムによって実現されています。

通常、暗号通貨を送金する際には秘密鍵と公開鍵が必要であり、それらは1対1の関係になります。 しかしリング署名は、複数の秘密鍵で暗号化し、複数の公開鍵で複合しているため、送金に使用された鍵が特定できないようになっているのです。

送金の際に使用されるウォレットアドレスは、この秘密鍵と公開鍵によって生成されるため、秘密鍵と公開鍵が特定できないということはウォレットアドレスも特定できません。ウォレットアドレスが特定できなければ、もちろん誰から誰にいくら送金したかということを特定することもできないということです。

また、ステルスアドレスという仕組みもMoneroの匿名性を高める要素となっています。 Moneroは、取引の度に一時的に発行されるステルスアドレスを仲介させて送金を行なっています。 このステルスアドレスは送金側と受取側のみがアクセスできる仕組みとなっているため、第三者はアクセスすることができず、また、送金側の情報と受取側の情報にアクセスしたとしても、ステルスアドレスを仲介させているため、取引の内容を確認することはできないということです。

ジーキャッシュ(Zcash/ZEC)

Zcashは数ある暗号通貨の中で最も匿名性が高いといわれています。 高い匿名性を実現している要素として、シールドトランザクションとゼロ知識証明の二つがあげられます。

シールドトランザクションとは

シールドアドレスというZcash独自のアドレスを活用した取引のことで、ブロックチェーンに記録されるアドレスを暗号化することで第三者が閲覧できない仕組みを実現しています。

しかし第三者から閲覧できない状況で、取引情報が正しいことをどう承認するのかという疑問が浮上するかと思います。ここで、次に紹介するゼロ知識証明という仕組みを利用することにより、取引情報が公開されていない状態でも取引を承認できるようにしています。

ゼロ知識証明とは

承認したい取引の情報が明らかになっていない場合でも、その取引が正しいということを証明できる仕組みです。

例えば、その取引の内容を閲覧するために合言葉が必要だとします。 AliceとBobだけがその合言葉を知っていることを第三者に証明するために、AliceはBobに対して、その合言葉が必要になる特定の行動を実施するよう指示します。 BobがAliceから指示された行動を間違えることなく何度も実施できれば、Bobは合言葉を知っているということを第三者に証明できる、ということです。

ゼロ知識証明を説明した論文では、これを洞窟内の行動に例えて説明しているので、興味のある方はぜひ一度読んでみてください。

匿名通貨以外の匿名性に関する動向

匿名性に関する動向は、俗に匿名通貨と呼ばれる通貨だけに限りません。

ビットコイン(bitcoin/BTC)

ビットコインは、シュノア署名という電子署名の仕組みを導入することが検討されています。 シュノア署名には、複数の署名を一つに統合できるという特徴があります。

これにより、どの署名による取引なのかを匿名化できるのではないかと期待されています。 また、シュノア署名により複数の電子署名を圧縮することでブロックチェーンに格納するデータサイズを削減できるため、匿名性の観点以外からも期待が持てる仕組みです。

イーサリアム(ethereum/ETH)

イーサリアムの第三段階目のハードフォークであるメトロポリスで、先述したZcashのゼロ知識証明(zk-SNARKsといいます)を活用した仕組みが導入されました。 ゼロ知識証明を使用することで利用者のプライバシー保護を実現しています。

zk-SNARKsは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決する技術”プラズマ”にも利用されています。

ウォレット

ここ最近、非常に多くの暗号通貨ウォレットが開発されるようになってきました。 新たに開発されるウォレットには、取引の度にアドレスを変更する仕組みが標準的に導入されています。

先述した通り、ウォレットアドレスが特定されるとそのウォレットアドレスで管理している金額が全て明らかになってしまうため、取引ごとにアドレスを生成することで、一箇所で多額の資産を管理することを避けているのです。この仕組みを決定性ウォレットアドレスといいます。

匿名性とマネーロンダリング

ここまで、匿名性の必要性や各通貨の匿名性について解説しました。最後に、匿名性を高めることとトレードオフであるマネーロンダリングに利用される可能性について触れておこうと思います。

マネーロンダリングは暗号通貨にとって常に付いて回る問題となっており、匿名性の議論をする際には特に考慮しなくてはなりません。

現在日本では、暗号通貨の取引所で口座を開設する際に必ず本人確認を実施するよう義務付けられています。こうすることで取引の匿名性を排除し、マネーロンダリングを防止しているのです。

規制当局と利用者の思惑

利用者の思惑と規制当局の思惑とは、ほとんどの場合でトレードオフとなっており、こういった取り組みに対して、利用者のプライバシー権が失われているといった意見も数多く耳にします。

匿名性を高める技術は悪事に利用されやすいという規制当局の意見に対して、Zcashの運営者たちは、悪い人はそういった技術だけでなく車やインターネットも利用して悪事をはたらく、我々の目標は良い人をサポートできる技術を開発することだ、と述べています。

これはまさにその通りで、世の中の全ての事象に善悪は付き物であり全ての悪を排除することはできませんが、適切な規制を整備することで悪事の発生確率を下げることはできます。

著者が個人的に注目している今後の匿名性に関する動向としては、ウォレット事業者に対しての規制が挙げられます。 現状、取引所には本人確認の義務が課せられていますが、ウォレットを作成する際にそういった手順は発生しません。 例えば、ウォレットから直接暗号通貨を購入できるようになった場合や、既に暗号通貨を持っている人に対して法定通貨を支払うことで暗号通貨を入手するといった場合には、現状の規制では完全に対応することができません。

変化の激しい業界の中で、匿名性という観点で動向を追ってみるのも勉強になるかもしれません。

この記事のまとめ

  • ブロックチェーンを辿ることで、特定のウォレットアドレスで管理している暗号通貨の総額が導き出せるため、その状態を果たして匿名といえるのか
  • 匿名通貨と一口にいっても、匿名性を実現している仕組みは多岐に渡る
  • 匿名性とマネーロンダリングの恐れはトレードオフである

技術的な進歩や価値観の変化に伴い、あらゆるサービスが無料で利用できる状態が当たり前となっています。 しかしそういったサービスの裏側では、実は膨大な量の個人情報が搾取されていることを忘れてはいけません。 無料で利用するということは何か代償を支払っているということなのです。

そういった状況から、ブロックチェーンを活用した運営者不在のサービス群Dappsの台頭が著しくなってきています。

暗号通貨やブロックチェーンはまだまだ発展途上の技術であるため、今後はDappsなどのサービスが既存の大規模サービスをどのようにディスラプトしていくのか、非常に楽しみです。

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